JISC6802の最終目的は、レーザ製品によって使用者に障害が発生するのを未然に防止することにあります。しかし、JISC6802の要求に従って必要な安全予防対策を施したレーザ製品であっても、その対策の機能を活用しなければ効果はないし、また、レーザ安全管理者が安全予防対策を制定しても、実際にレーザ製品を使用する者が、それを実行しなければ意味がありません。したがって、レーザに対する安全保護は、使用者がレーザ製品の潜在的危険性を正しく認識し、決められた手順を実行して初めて達成できるものであり、レーザ製品に要求される技術的管理対策は、使用者の安全予防対策が容易に実行できるように、機器として機能を提供しているものであると理解するべきです。すなわち、機器がいかに安全装置を具備しようとも、その機能を使用しなければ、安全対策は完遂されません。
レーザ製品に関与するのは製造業者と使用者であり、使用者はレーザ安全管理者と作業者に区別されています。
レーザ製品の製造業者が行うべき事項は、次の項目です。
- 保護筐体
- クラス1を超えるレーザ光に人体がさらされないように
- 保護筐体のセーフティインターロック
- 保護筐体のアクセスパネルを取り外すとクラス3Aを超えるレーザ光が出てくる場合には必須
- リモートインターロックコネクタ
- 外部インターロックでレーザを制御できること。クラス3B、4のレーザは必須
- 鍵による制御
- 鍵を抜いた状態でレーザ運転できないこと。クラス3B、4のレーザは必須。
- 放出警告
- レーザが放出又は放出される可能性があるときに音又は光で。クラス3B、4のレーザは必須。
- 減衰器
- クラス3B、4のレーザにシャッターを設ける。
- 制御器の位置
- レーザを制御する位置でクラス2を超える放射を浴びないこと。
- 観察光学部
- 加工機の観察窓などからクラス1を超える放射がないこと。
- 走査レーザ
- ビームが走査していればクラスは下げられるが、その走査が止まってしまったときに割り当てたクラスを超えないこと。
- クラスのラベル
- クラス2以上に必要。クラス1は説明書が必要。
- 開口ラベル
- クラス3B以上のレーザの出口近くに表示。
- サービスのための立入ラベル
- アクセスパネルを取り外したときにクラス1を超える放射に人体がさらされるならば、その旨の表示。
- 解除したセーフティインターロックのラベル
- セーフティインターロックを解除したときにクラス1を超える放射に人体がさらされるならば、その旨の表示。
- 使用者への情報
- 取扱説明書に安全に関する記述。
- 購買およびサービスのための情報
- パンフレット、サービスマニュアルにラベルの複製、安全に関する情報を記載する。
- レーザ光ケーブル伝送システム
- コネクターを外すとクラス1を超える放射にさらされる場合には、工具を用いなければコネクターがはずれないようにすること。
クラス3A以上のレーザ機器の運転にはレーザ安全管理者が任命されていなければなりません。レーザ安全管理者は、レーザの危険性の評価と安全管理を遂行するのに十分な知識をもち、レーザの安全管理に対して責任を負う者です。レーザ安全管理者が行うべき事項は、次の項目です。ただし、JISC6802はレーザ製品の安全基準であり、その製品を使用する場面での使用方法の基準ではありません。従って、これらは指針であり、実際にどのように管理するかは使用者に任されています。
- リモートインターロックの使用
- ドア等に連動してレーザを停止して被爆を防ぐこと
- 鍵による制御
- 鍵によってレーザを運転し、許可のない者がレーザを運転することがないように。
- 遮光器または減衰器
- シャッター等を活用して、見学者が偶発的に被爆しないこと。
- 警告標識
- レーザ設置場所の入口に標識
- ビーム光路
- ビームの端末をストッパーにより終端する。ビームの位置は目の高さを避ける。等
- 鏡面反射
- ビーム中にある光学部品が不意に動く等により、予期しない鏡面反射が生じないように。
- 目の保護
- 保護めがねを正しく使用すること。
- 保護着衣
- 皮膚の保護。ただし難燃性、耐熱性であること。
- 訓練
- 運転員、保守要員に対して。
作業者が守るべきことは、レーザ安全管理者が制定する作業基準を遵守することです。